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どこへ行く、世界
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1. アメリカ経済の行方―ドル本位制の終焉

11. 戦争ゲームを考える −フォン・ノイマン仮説の破綻
12. 21世紀の世界はどこへ行く?(その2)
13. ロシアの政治・経済の行方(2) −ロシアにおける市場経済化の軌跡
14. 中国の政治・経済の行方(3) −ケ小平・21世紀の夢!

15. 大国インドの登場 −変貌する21世紀世界の勢力地図
(1)大国インドへの道
(2)現代インドのなりたち
(3)インドにおける計画経済の系譜
(4)ITマハラジャの国へ!−新しいインドの産業の出現

16. 世界経済の興亡(1)(18-20世紀)−ポンドとドルの時代
17. 世界経済の興亡(2)(20-21世紀)−ドルの次の時代?
 
  15. 大国インドの登場 −変貌する21世紀世界の勢力地図

(1)大国インドへの道
●入れ替わる超大国の位置 −「インド的貧困」からの脱却!
 2000年現在における世界の人口の多い国を順に挙げてみよう。

第1位 中国
12.7億人
(20%)
第2位 インド
10.0億人
(16.5%)
第3位 アメリカ
2.6億人
(4.3%)
第4位 ブラジル
1.6億人
(2.6%)
第5位 ロシア
1.4億人
(2.3%)
第6位 日本
1.2億人
(2%)
世界総計
60.5億人
(100%)
(出典:経済要覧2004年版)

 「世界はどこへ行く」の中国の項で、21世紀中ごろの世界第1位の経済大国は中国になると述べた。その中国に続いてインドもアメリカをしのぐ経済大国になる可能性が強くなってきている。
 中国、インドの人口を合わせると世界人口の3分の1を占める。この膨大な人口を持つ国が、20世紀には西欧・日本などの植民地政策により貧困な状態に置かれてきたこと自体が異常であった。
 それが21世紀になって、ようやくその状態からの脱却に成功したことになる。

 そうなると21世紀中葉の世界の勢力地図も現在に比べて大きく変貌する。そして経済大国の順序が、上記の人口の順序に似てくるのはむしろ自然のことであろう。それが、最近、注目され始めたBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国の頭文字)である。

 中国とインドは、共に人口は非常に多かったものの、平均所得が非常に低いために、驚くべきことに日本では、従来、両国とも経済統計から全く無視されてきた。ちなみに両国の最近の経済データを挙げてみると、次のようになる。

  GDP(国内総生産) 1人当たりGDP
中国 1兆4161億ドル(2003年) 1,091ドル
インド 5990億ドル(2003年) 530ドル

 2002年のGDPの規模を見ると、中国はOECD諸国における第5位のフランス(1.4兆ドル)とほぼ同程度であり、また、インドは第10位の韓国(4.7千億ドル)の少し上に位置しており、GDPの総額では、共に世界の10位以内に入っているのが実情である。
 しかし1人当たりのGDPは、現状では、共にまだ非常に低いレベルにあり、30位までにも入っていない。ちなみに2002年に第29位のトルコの1人当たりGDPは、2595ドルである。

 中国のケ小平は、2050年における中国の1人当たりGDPの目標を5,000ドルに設定した。これは大変つつましい目標であり、むしろアメリカに対する目くらましの数字であることを中国の項で述べた。
 つまり12.7億人の国民の平均GDPが5,000ドルになると、そのGDP総額は6兆3,400億ドルという巨額になり、一挙に世界第2位の経済大国になる

 21世紀中葉の段階において、既に人口が減少して衰退期に入っている日本経済は、世界第2位の地位を維持することは最早困難である。その上、21世紀の初期段階において日本経済は、地震などによる大被害を受ける可能性が高まっている。
 それに対して中国のこのGDP目標は、経済成長率を3%程度に抑えたつつましい数字であり、現在の中国のように9%台の成長率が続けば、実際にはアメリカを抜いて21世紀中ごろに世界一の経済大国になる可能性が高い

 中国、インド共に平均所得水準が低かった原因は、西欧列強の植民地であった歴史的性格に起因するものである。さらに第2次世界大戦後に植民地経済からの脱却にあたって、社会主義的な計画経済を採用したことも、経済発展を遅らせる要因になった。
 しかし、その状況は90年代に大きく変わり、中国もインドも共に市場経済を大幅に導入することにより、高度成長経済に急速に変貌しつつある

 戦前の日本には「インド以下的賃金」という言葉があり、インドは世界的貧困の代表のようにいわれてきた。中国の場合も同じである。共に独立国家になってからも、社会主義的経済政策を採用したことにより、所得水準がそのまま低く抑えられてきていた。その状況は、市場経済が導入された21世紀には急速に変わってきている。

 1人当たりの所得水準が上昇すれば、共に10億以上の人口を抱える中国、インドの国内総生産の総額が、一挙に世界1,2の位置を占めることは当然のことである。
 その結果、ヨーロッパ、アメリカなどの西欧が世界の経済的中心的位置を占めてきた19-20世紀世界が終わり、中国、インドが中心になったアジア中心の21世紀世界へ急速に変貌しつつある

●90年代のインド経済と21世紀の成長予想
 インド経済が軌道に乗り始めた1990年代の経済成長の概況を図表-1に揚げる。

図表-1 90年代におけるインド経済の成長(単位:10億ルピー)

(出典:駐日インド大使館のWebデータから作図)


 図表-1を見ると、1991-2004年にかけてのインド経済は、実質成長率6.17%という高率で、しかも非常に安定的な成長を展開してきていることが分る。
 
 この経済成長の内容については後述するが、21世紀を代表的するIT技術に依存している部分も多く、今後もこの経済成長が持続することが期待されている。
 そこで仮に従来の6.17%のGDP成長が今後も持続すると仮定した場合、2050年の経済規模は次のような数値になる

  インドのGDP 1人当たりGDP
2003年 5,990億ドル 530ドル(25,800ルピー)
2050年 99,888億ドル 8,838ドル(430,234ルピー)

 つまり年率6%の経済成長が持続すれば、2050年におけるインドのGDPは10兆ドルに拡大する。それは現在のアメリカのGDP規模に匹敵する大きさであり、1人当たりGDPは9千ドルに近づく
 それは現在における韓国の一寸下辺りの水準である。

 これからの50年の間の変動を正確に予測することは困難であるが、大体の見通しや位置づけを行なうことは十分に可能である。
 21世紀の初頭において、既に中国、インドのGDPの大きさは共に世界の10位以内にある。そして、この2国の経済成長率は、インド6%、中国9%と共に非常に高い。それにも関わらず、1人当たりのGDPは共に現在あまりにも低い位置にあることから、今後の50年間で少なくとも1人当たり5-10千ドルまでの上昇を仮定することは、決して不自然ではないであろう。
   
 この仮定が受け入れられれば、2050年段階におけるGDP規模は、中国が11兆ドル、インドが10兆ドルになることはごく自然の成り行きといえる。
 問題はその段階におけるアメリカのGDPであるが、現在アメリカは財政、貿易、経常収支ともに、年々、巨額な赤字を更新しており、その上、既に膨大な累積債務を抱えている。
 この現状から考えると、アメリカは50年先に、現状の10-11兆ドルという現状のGDP水準を維持することさえ、最早、困難であろう。

 このように見てくると、21世紀中ごろの世界経済の勢力地図は、まずGDPのトップは中国、続いてインド、第3-4位にEUとアメリカが競い合い、第5-7位当たりをブラジル、ロシア、日本が競い合うという姿が見えてくる。
  
 しかしこの姿は、大きな戦争や革命の勃発などの激変が起これば狂いがでるのは当然であるが、そのような激変があっても、もはやこの変化の方向を変えることはできないであろう。

●インドの風土と地域特性
 インドは、国土の面積が329万平方キロで、世界第7位である。そこに25州と7連邦(中央政府)直轄地で構成される連邦制の共和国である。
 
 北部地域には人口の3分の1が居住し、1億3千万人が住むのが北部のウッタル・プラデッシュ州である。その南に日本より広いインド最大の面積をもつマデイア・プラデッシュ州があり、指定カーストや指定部族の多い州である。
 インド最大の面積の州と最多人口を持つ州が、共に農業を主要産業としていることは、現在のインドを象徴している。

 西部地域にはボンベイがあるマハラ・シュートラやクジャラート、ゴアなどの州があり、1人当たりの州内生産が非常に高い
 これらの州は、古くからの綿花工業の中心地であったが、近年では機械工業、石油化学工業など工業の多角化が進んでおり、ボンベイはインド最大の商工業、金融都市となっている

 東部地域は、西ベンガル州を中心にした諸州であるが、シッキム以下の地域は山岳地域が多く、低開発地が多い。西ベンガル州はニューデリーへ遷都するまでは英領インドの首都であった地であり、ボンベイに並ぶ商工業の中心都市になっており、ベンガル3州(西ベンガル州、アッサム州、ビハール州)は、重化学工業の盛んな地域となっている

 南部地域は、アンドラ・プラデイッシュ、カルナータカ、タミール・ナドウ、ケラーラの諸州であるが、これらの州は、かつてはゴム、ココナッツ、コーヒーなど、プランテーション農業の中心地域で、その生産額の9割以上を占めていた
 現在なおそれは続いているが、現在ではハイテク産業の中心地として世界中から注目される地域になってきている




 
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