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1.仏教における浄土への転生
(1)六道輪廻 -仏教における死後の世界
仏教における世界は、無色界、色界、欲界の「三界」で構成されており、その最下層の欲界は六段階で構成されている。その六つの段階は、天・人・修羅・畜生・餓鬼・地獄からなり、これを「六道」という。そして人間の魂は、この六道の中を輪廻転生(りんねてんしょう)すると考える。したがって死とは、魂が次の世界へ転生することであった。
この思想は、インドにおいて古来行われてきたものであるが、仏教思想を通して伝来する中で、中国、日本においては人の生を無限の過去から未来へと開く、新しい思想として受容された。
すでに、古く万葉集の中でも、
この世には人言しげし来む世にも
逢はむわがせこ今ならずとも (高田女王)
この世にし楽しくあらば来む世には
虫に鳥にも我はなりなむ (大伴旅人)
などと、輪廻転生の思想がうたわれている例を見る。
藤原道長などの平安京の貴族では、当時極楽を模した寺院の建立などによる「生ける浄土」の実現を通して、輪廻の思想は常識として行われていたと思われる。(和辻哲郎「日本の文芸と仏教思想」「続日本精神史研究」所収)
人間の魂の転生の最高位は、神となって天上界へ転生することであり、第2が再び人間となって人間界へ再生することである。この世での権力者は、当然死後にもこの世のそれを越えた地位を得て、天上界に転生したいと考えたことであろう。
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