アラキ ラボ
日本人の思想とこころ
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1.死の予感

11.仏教伝来のナゾ

12.インド仏教の成立
(1)仏教とは?
(2)仏典とその形成
(3)ブッダの教説とは何であったのか?

13.陽明学を体系的に理論化した?西田哲学
14.明治の新思想 ―儒学からキリスト教へ
 
  12.インド仏教の成立

(1)仏教とは?
●「仏教」の特殊性 ―2元的ブッダとその教義
 仏教は、キリスト教、イスラム教とならぶ世界の3大宗教の一つである。2500年前のインドに生まれたゴータマ・ブッダ(シャカ・ムニ)により創設された。
 仏教はブッダによって創設されたことから、当然、その信仰の対象は教祖・ブッダになるし、その経典はブッダの教えが記述されたものと誰でも思う。
 しかし意外なことに、仏教の教祖は創設者ゴータマ・ブッダから離れて、抽象化されたブッダに置き換えられていることが多い。また、その経典は教祖・ゴータマ・ブッダが説いた教えから離れて、抽象化されたブッダの教えに大きく拡張されている。
 そのため膨大な仏教経典の多くは、抽象化されたブッダの教えであり、そのうち本当に教祖・ブッダが語った経典を求めるのが難しいという、フシギな状況になる。

 たとえば実際に日本の仏教寺院に祭られている仏像(=御本尊)を見ても、奈良や鎌倉の大仏はベルシャナ仏であるし、浄土系の寺院ではアミダ如来になる。弘法大師の真言宗は大日如来であるし、教祖・ゴータマ・ブッダが仏像として祭られるのは、禅宗と小乗系の宗派くらいである。大乗系の宗派では、本尊の脇に仏教の教祖・ブッダが祭られているということは、考えてみるとフシギである。

 つまり「ブッダ」は、驚くべきことに、歴史に実在したゴータマ・ブッダとは別の抽象化されたブッダに転身し、実在したブッダとは異なる別のブッダとして、仏教の教義を説いていることになる。
 そのため仏教の経典は、ゴータマ・ブッダの死後、1000年にわたって作り続けられた。そして、それらがすべて仏教の経典として、今に伝えられている。

 その理由は、80歳でこの世を去ったゴータマ・ブッダを慕う弟子たちが、たとえ生身のブッダがこの世を去っても、永久に法として理として存在するブッダが永遠の過去から未来に生き続け、説法するものとして、この法としての仏身を法身仏と名付けたことからくる。
 この考え方により、2500年前に実在したゴータマ・ブッダは、入滅の後も、1000年にわたり説法を続けたことになる。この場合、歴史的実在者としてのゴータマ・ブッダは、「応身」とよばれ、法や真理が仏体化したブッダは「法身」、「報身」と呼ばれる。
 このようなことは、他の宗教には見られない仏教の特殊性である。さらに仏教の面白いことは、その教祖の時間的・空間的活動を抽象化して、後者の教義の及ぶ範囲を大きく拡大した半面で、その教義の及ぶ時間的範囲を、逆に大きく制限した。

 たとえば仏教では、ゴータマ・ブッダの入滅後、仏教の教義を構成する「教、行、証」に対する市井の受容が、次の3つの時代を経て変化していくと考えた。
 ブッダの入滅から、500-1000年間はブッダの教義が正しく残る時代であるが、その後の500-1000年の間に、正法が行なわれない像法の時代にかわる。さらに其の時代が過ぎると、仏教の教説すら消滅する末法の時代に入る。
 このように仏教の教義自体を、生成・発展・衰弱・滅亡・再生という弁証法的なプロセスで捉えることは、他の宗教には見られない仏教の特殊性である

 仏教の教義における生成・発展・衰弱・消滅・再生の過程は、次のようになる。
  1. 正法の時代・・そこには仏教教義が正しく残っており、教(=教説)、行(=その実践)、証(=その結果)がすべて完備している時代(500-1000年)
  2. 像法の時代・・そこには教説と実践のみしか残っていない時代(500-1000年)
  3. 末法の時代・・教説のみしか残っていない時代、それがさらに進むとすべて消滅する法滅期に入る。その期間は非常に長い。
  そしてブッダの入滅後56億7千万年という驚くべき長い年数の後、未来仏である弥勒菩薩が登場して、再び仏教の教説が復活するというのが、仏教における壮大な予言である。このような思想は、他の宗教には類例の無い仏教独特の世界であり、非常に面白い。

●ゴータマ・ブッダの生涯
  最初に教祖・ゴータマ・ブッダの生涯から話を始めよう。ゴータマ・ブッダ(BC463-383?一説では、BC566-486)は、ネパール国境近くのカピラヴァストウという小国の王子として誕生した。誕生日は4月8日とされ、誕生会・花祭りの日として祝われている。また、亡くなった涅槃会は、2月15日に行なわれる。
 ブッダの幼名はゴータマ・シッダルタといい、シャカ族から出た聖者という意味で、シャカ・ムニ、釈迦牟尼、釈尊などともよばれる。ブッダ(仏陀)という言葉は、インドの古典語であるサンスクリットで「目覚めた者」、「悟りを開いた者」を意味する。

  ゴータマ・ブッダの生涯における4大事は、1.誕生、2.出家、3.成道、初転法輪、4.入涅槃とされる。
  1. 誕生―4月8日、花祭り。仏教徒の最大の行事であり、釈迦像に甘茶をかけて祝う。
  2. 出家―ブッダ29歳のとき、家、家族、王位をすてて、1修行者として出家した。
  3. 成道、初転法輪―35歳の時、成道(悟りを開く)。この日は12月8日といわれる。そしてはじめて5人の弟子に説法した(初転法輪)。それは現在のペナレス郊外のサールナートが説法地であったといわれる。
  4. 入滅、入涅槃―2月15日、入涅槃会を行なう。





 
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