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(4)2000年代初頭のIT環境

 このように21世紀のITは、まさにブロードバンドのサービス競争で始まった。2000年4月に小渕恵三首相の突然の死を受けて次の政権の座についた森喜朗内閣は、2001年3月に政府の重点政策として「超高速ネットワークインフラ整備及び競争政策の推進」を宣言し、e-Japan重点計画というIT政策を決定した。そして7月にその戦略会議を設置した。

 戦略会議の内容は、5年以内に30-100Mbpsという超高速アクセスが可能な世界最高水準のインターネット網を整備し、3000万所帯が高速アクセス1.5-12Mbps、さらに1000万所帯が超高速アクセス30-100Mbpsというブロードバンド・サービスを受けられるようにするというものであった。

 このようなことから、2001年は日本にとっての「ブロードバンド元年」と呼ばれた。その2000年代の初頭において日本のブロードバンドは、どのような内容で普及しつつあるかを図表-3にあげる。

図表-3 日本のブロードバンド・サービスの推移(単位:契約回線数)

(出典)依田高典「ブロードバンド・エコノミックス」日経新聞出版社、34頁から作図、(1.3:2001年3月、3.3:2003年3月、6.3:2006年3月)

 次に21世紀の初頭段階におけるブロードバンドの普及で、世界の先端を行く米国、日本、韓国のブロードバンドの状況を図表-4にあげる。

図表-4 米国、日本、韓国のブロードバンドの普及状況(2003-4年:単位:回線数)

(出典)依田高典「ブロードバンド・エコノミックス」日経新聞出版社、35頁から作図

図表-5 米国、日本、韓国のブロードバンドの所帯普及率(2003-4年:単位:%)

(出典)依田高典「ブロードバンド・エコノミックス」日経新聞出版社、35頁から作図

 上記の3図から興味深いことが分かる。まず世界でブロードバンドの最先端をいくのは回線数では米、日、韓の順になるが、所帯別普及率では、韓、日、米の順で、アメリカは3国の最下位になる。

 アメリカにおけるブロードバンドの内容はCATVであり、ADSLでは、日本が世界一になる。その意味から、ブロードバンドの技術水準は、この段階では日本が世界の最先端にあることが分かる。

 ところがブロードバンドの家庭への普及率を見ると、韓国が世界一である。このことは、ブロードバンドの顧客への普及、特に、通信から放送への展開については、韓国が世界の最先端にあることが分かる。

 このことはアメリカ、日本、韓国が、自国の通信業界の特性を生かしながら、ブロードバンドへの道を進んでいることを示している。たとえばアメリカでは、地域ごとの有線放送網が発達しているため、その有線放送網に基づくブロードバンドやIPが進んでいるわけである。

 それに対して日本では、在来、NTTによるADSLと光ファイバーのネットワークの開発と推進が行なわれており、21世紀初頭において、その分野では世界一の水準にあることが分かる。

 韓国では、金大中政権の99年3月に、「サイバーコリア21」というIT政策が行なわれ、国家ぐるみで規制緩和とベンチャー振興がすすめられた。その内容はADSLを主体にしていたが、それにより、家庭へのブロードバンドの普及率では、2004年1月の段階において75.8%に達しており、第2位の日本の33.6%(2004.6月)に大きく差をつけて、ダントツで世界一の水準にある。






 
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