(2)小泉政権による「郵政民営化」の基本方針
●民営化の組織形態
2004年9月10日、小泉政権は、「郵政民営化」の基本方針を閣議決定した。その組織形態は次の5つになることが決まった。
(1) 窓口ネットワーク会社
郵便、郵便貯金、郵便保険の各事業会社から窓口業務を受託する。
(2) 郵便事業会社
従来の郵便事業に加えて、広く国内外の物流事業への進出を可能にする。
(3) 郵便貯金会社
民間金融機関と同様に、銀行法等の一般に適用される金融関係法令に基づき業務を行なう。(窓口業務や集金業務は窓口ネットワーク会社に委託する)
新規契約分から郵便貯金の政府保証を廃止し、預金保証機構に加入する。在来の公社勘定については、公社承継法人が受託し、その管理・運用は、郵便貯金会社が受託する。
(4) 郵便保険会社
民間の声明保険会社と同様に、保険業法等の一般に適用される金融関係法令に基づき業務を行なう。(窓口業務は窓口ネットワーク会社に委託)
公社勘定は公社承継会社が保有し、その管理・運用は郵便保険会社が受託する。
(5) 公社承継法人
郵便貯金、簡易保険の既契約を引き継ぎ、既契約を履行する。郵貯・簡保の既契約に関する試算の運用は、それぞれの郵便貯金会社、郵便保険会社に行なわせる。
▲移行期の組織
国は、2007年4月に日本郵政公社を廃止し、4事業会社と国が全額株式を保有する純粋持ち株会社を設立する。窓口ネットワーク会社及び郵便事業会社の株式は持ち株会社が全額保有するが、郵便貯蓄会社と郵便保険会社については、移行期間中に株式を売却し、民有民営を実現する。
その際には、新会社全体の経営状況および世界の金融情勢等の動向に対するレビューも行う。また国は、移行期間中に持ち株会社の株式の売却を開始するが、発行済み株式総数の3分の1を超える株式を保有する。
公社承継法人を設立する。この法人は、郵便貯金、簡易保険の旧契約の管理、運用は郵便貯金会社と郵便保険会社に行わせる。
▲経営の自由度
窓口ネットワーク事業においては、試行期間をもうけつつ、民間金融商品等の取り扱いを段階的に拡大し、地域の「ファミリー・バンク」「ワンストップ・コンビニエンス・オフィス」として、地域密着型のサービスを提供する。
郵便事業会社においては、国際的な物流市場をはじめとする新分野への進出を図る。
▲郵便貯金・郵便保険事業の経営
郵便貯金および簡易保険事業は、当面、限度額を現行水準(=1千万円)に維持する。その際、貯金及び保険は、預金者、被保険者ごとに新契約と旧契約を合算して管理する。その上で、経営資源の強化等、最終的な民営化に向けた準備を進める。
民間金融機関への影響、追加的な国民負担の回避、国債市場への影響を考慮した適切な資金運用を行なうが、民有民営化の進展に対応して、厳密なALM(資産負債総合管理)の下で、貸付も段階的に拡大できるようにする。
大量の国債を保有していることを踏まえ、市場関係者の予測可能性を高めるため、適切な配慮を行う。
▲民間企業との平等性(イコール・フィッティング)
新会社は、移行期当初から民間企業と同様の法的枠組みに定められた業務を行い、政府保証の廃止、納税義務、預金保険機構ないし生命保険契約者保護機構への加入等の義務を負う。
▲移行期の終了
移行期は、2017年3月末までに終了する。郵便貯金会社および郵便保険会社は、遅くとも上記期限までに最終的な枠組みに移行する。そのため移行期における両社のあり方については、銀行法、保険業法等の特例法を、時限立法で制定して対応する。
▲準備期のあり方
2007年4月の民営化までの時期は、準備期と位置づけ、民営化に向けた準備を迅速に進める。(以下略)
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