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  (2)IT産業の主役としてのコンピュータと通信の発達

●コンピュータと通信の接合
 コンピュータと通信は、本来、産業としての背景が異なるため、同一の時間軸に乗せる事は非常に難しいが、コンピュータと通信の接続という観点から考えて見ると、次の4つの段階に分かれるように思われる。
その発展段階を、図表-1にあげる。
図表-1 コンピュータと通信の接合の経過
年代 情報処理の特徴 コンピュータ 通 信
1950-80 大組織を中心にした大量・高速の情報処理、利用者はコンピュータとプログラムの専門的知識が必要となる。 大型コンピュータとミニコンピュータ 専用回線により中央処理機構と衛星端末とを接続
1980-90 小組織や個人でも情報処理ができるが、ベーシックやDOSに対して最小限の専門知識が必要 マイクロプロセッサーとパソコン(MS-DOS) INS(高度情報通信システム)の開発とデジタル回線の普及、電話回線の自由化
1990-2000 コンピュータやプログラムの知識が全くなくても、ある程度の情報処理や通信ができる パソコン(ウインドウズ)+インターネット+メール INSサービスの一般化とインターネット、メールの普及、多様な通信回線の利用。
2000- コンピュータと通信の技術的知識が全くなくても、音声、文字、画像などの処理や通信ができる。 同上+携帯電話端末 ブロードバンドの利用と再編成、光ファイバーの普及

 (1) 大型コンピュータによる大量データ処理の時代(1950-80)
 政府機関、学校・研究所、大企業などの大規模データ処理を、高価な大型コンピュータが行った時代である。これらの機関や組織の間でのコンピュータ通信やデータ転送はあったものの、高価な専用回線が必要となるため、基本的には大型コンピュータによるバッチ処理が中心になった。
 ここでのコンピュータ言語としては、人間の言語に近いマクロ言語であるFORTRAN,ALGOL,COBOLなどが利用された。

 1970年代には、廉価なミニコンピュータが出現したが、プログラム言語はFORTRANやALGOLなどの高次言語が使用できず、機械語に対応したアセンブラ言語によりプログラムを作成した。そのため大型機よりも高度な知識を持ったプログラマーが必要になった。その様な理由で、ミニコンピュータは、パソコンのように大衆化せず、大型コンピュータの衛星コンピュータのような利用方法になった。

 この時代、日本の一般の電話ユーザには、音声以外の情報の電話伝送が禁じられていた。そのためデータ通信が必要な大組織では、高額な専用回線により、大型コンピュータにデータを集中して処理するシステムが作られた。
 たとえば、国鉄(後のJR)の座席指定、切符購入システム、日本航空の座席予約システム、NHKの番組編成システム、高度なシステムでは、建設省土木研究所における全国の土木工事計画の自動作成など、世界的水準をいくシステムなどが作られた。

 (2) マイクロプロセッサーとパソコンの登場(1980-90)
 80年代には、8ビットのマイクロプロセッサーを搭載したPC-8001のようなパソコンが登場して、ベストセラーになった。そしてそれらのパソコンには、MS-DOSやウインドウズが搭載されており、言語はBASICがまだ主流であるものの、しばらくしてワードやエクセルがつかえるようになったことから、小企業や個人の事務処理においても、パソコンが非常に使いやすくなった。

 そのためパソコンを利用した一般的なデータ処理は、大組織のみでなく中小組織から個人にいたる広い範囲のデータ処理に利用されるようになった。
 85年に電電公社が民営化されて、通信回線は、光通信、CATV、IP電話など多様化され、産業の末端のデータ処理とそのデータ伝送のシステムが構築された。 
 しかし通信回線を利用したデータ伝送は、まだかなりの専門的知識を必要としており、インターネットの利用はウインドウズ95の出現を待つ必要があった。

 (3) INS(高度情報通信システム)とインターネットの時代(1990-2000)
 この頃から、コンピュータの通信機能が高まり、インターネットと接続可能なウインドウズ95を搭載した高性能パソコンが出現した。そして大中小など殆どすべての企業において、各人がパソコンを操作して、作表、書類作成、通信するシステムが一般化した。
 そこでのコンピュータ言語は、ウインドウズのGUI(Graphical User Interface)の利用が一般化したため、MS-DOSやBASICを全く知らず、コンピュータの知識のない人でもパソコンが利用できる時代になった。そのため、コンピュータの利用人口は、95年以降、一挙に拡大した。

 (4) ブロードバンドと情報産業の再構築の時代(2000-)
 2000年代に入ると、多様な産業ごとの情報形式がデジタルで統一され、企業の内外との高速なデータ通信が可能になった。また企業の情報発信側と受信側の、双方向の高速通信が可能になったことを受けて、各情報産業のあり方が大きく変わり、情報産業の再編成が行なわれる時代に入った。
   
 90年代末から2000年代の初頭にかけて、ADSL,CATV,FTTHなど、民間企業の参加により多様な高速通信サービスの競争が激化した。そのため21世紀の始まりの年である2001年は、「ブロードバンド元年」と呼ばれることになった
 
●用語の説明
 ここに新しく登場した言葉について簡単に説明する。
 ▲ブロードバンドとその内容
 まず、ブロードバンドとは、正確には、「ブロードバンドインターネット接続:Broadband Internet Access」のことであり、日本では、通信事業者からユーザまでの「下り」回線の通信速度が512kbpsから1Mbps以上の、高速伝送が実現されるインターネット接続サービスのことを指す。
 これに対して、ダイヤルアップ接続やPHS(Personal Handy Phone System:簡易型携帯電話・デジタル電話システム)などの低速接続を、「ナローバンド:Narrowband」という。

 ブロードバンドの内容としては、つぎのものがある。
 (1) ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line :非対称デジタル加入者回線)
 ユーザから通信事業者への上り回線(アップリンク)と、通信事業者からユーザへの下り回線(ダウンリンク)の速度が、非対称なADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line : 非対称デジタル加入者回線)サービスのことである。
 通信速度の上りと下りが非対称である事が特徴であり、たとえば上り272kbpsに対して、下り1.5Mbpsというように大きく異なる。
 (2) FTTH(Fiber To The Home:光ファイバー家庭接続)
 光ファイバーを家庭のインターネットに直接接続して、光通信ネットワークを作る方式であり、超高速(10M〜100M〜1Gbps)のインターネット接続が可能になる。
 (3) CATV(Common Antenna TeleVisionもしくはCommunity Antenna TeleVisionの略:共同受信)
 ケーブル(同軸ケーブルや光ケーブル)を用いて行なわれる有線放送で、有線ラジオ放送を除くものをいう。在来はテレビ放送を中心としてきたが、1998年ごろからインターネット接続や回線交換方式電話、IP(Internet Protocol)電話などのサービスが行なわれ、全国的に普及した。
 90年代のCATVによる伝送は、下りで100kbpから1Mbpsの高速が一般化した。  

 ブロードバンドとは、電話線や光ファイバーなどを通じて、大量のデータを高速で伝送し、コンピュータ処理することが可能になったことを意味している。その環境が2000年以降、急速に変化し、コンピュータの通信機能が大幅に改善された。
 コンピュータによる大量のデータが高速で伝送され、オンライン(=即時処理)でコンピュータ処理する事が可能になった。そのことによりTV、放送、新聞、雑誌などのメデイア産業は、大量・高速なデータ処理の進展により、21世紀には深刻な影響を受けると思われる。それについて次に述べる。






 
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