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どこへ行く、日本
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1. 日本経済の行方

11. 迫る東京・横浜大地震 ―その世界経済への影響を考える!
12. 関東大震災を本格的に救援したアメリカ ―近づく東京・横浜大震災後の日米関係を考える!

13. 構造偽装マンション問題を考える
(1)構造偽装マンションにおける「カシ」とは何か?
(2)構造偽装を何故発見できなかったのか?

14. 「建築の品質」とその管理について
15.日本のIT革命(第1部) ―その経過とNTT
16.日本のIT革命(第2部) ―ソフトバンクとライブドア
17.「小泉改革」とは何だったのか? −(その1)特殊法人「道路公団」の改革
18.「小泉改革」とは何だったのか? −(その2)郵政民営化
19.原爆と原発について考える!
20.公的年金制度の危機を考える −その暗澹たる未来!
21.ゼロ金利時代 ―金融失政の10年
 
  13. 構造偽装マンション問題を考える

(1)構造偽装マンションにおける「カシ」とは何か?
 今回の構造偽装マンションとホテルの問題は、今まで数多くあった欠陥マンション問題とはまったく次元の違う問題を提起した。この問題は、2006年以降、日本の建築行政の根底を揺すぶる大問題に発展すると思われる。
 ここではそのうちの最も重要な問題点をいくつか挙げてみよう。

 まず震度5程度の地震で倒壊する可能性のあるマンションが多数見つかったことである。これは床がキシムとか、隣の部屋の声が聞こえる、といった従来の「カシ(瑕疵)」とは根本的に違い、住民の生命を脅かす致命的な「カシ」をもった物件である。
 さらに驚くべきことに、これらの致命的カシを持ったマンション、ホテルが厳重な建築検査に合格し、適法物件として公的機関の承認を受けていたことである。
 これにより日本の建築の安全に関する信頼性は地に落ち、建築行政のレベルは戦争直後の混乱期の振出しへ戻った。

●「カシ」とは何か?
 まず最初に、「カシ」の意味から説明する。カシとは、(1)物の価値を減少させるような欠点、(2)その物に予定される品質特性と性能の欠如、と考えられている。
 たとえば、購入したマンションが雨漏りしたとする。これは修理を必要とするマンション価値の減少であり、防水特性の欠如というカシである。
 調べてみてベランダ部分の防水塗料やヒビワレに問題があった、ということは、日常的なカシの問題である。

 これに対して震度5以上の地震で倒壊するというカシは、もっと重大なカシであることは誰でもわかる。ところがこの誰でもわかる重大なカシが、従来、特にマンションにおいて驚くほど軽視されていたことが今回の問題から明らかになってきたことである。

●売買契約における「カシ」問題
 通常、マンションの購入は、映画のセットに似た仮想モデル・ルームを見ただけで、あとは売主を信用して、パース(=姿図)と簡単な間取図により物件を購入する「売買契約」により、住宅の取引が行なわれる
 
 この場合、マンションの売主と買主との契約関係は、「請負契約」ではなく「売買契約」になる。民法において、「売買契約」とは「財産権」の移転とそれに対する「代金の支払い」により成立する契約とされている

 売買契約に当たり、買主が地震に対する安全性を調べようとしても、構造図とか構造計算表などは、通常、契約図書に含まれていないのである。
 仮にその提示を求めたとしても、構造図は建物全体として作られているため、自分の家の安全性に関するカシだけを調べることは不可能である。
 さらにマンションの構造体のどこまでが個人の財産と考えられるか?ということもあり、法律的にいろいろな問題を含んでいる。
 この点が、戸建住宅を建築する場合の請負契約における「カシ」問題とは、決定的に違う点である。

 このようにマンションにおいては、1戸だけの構造的安全性を調べることが出来ないことから、日本においては公的な建築安全性に対する検査システムが、建築基準法により厳重に作られている、と信じられてきた。
 ところが今回の事件により、この建築の安全性に対する公的な検査システムが全く機能していないことが、白日のもとに晒されてしまった。

 しかも今回にように、売買契約の締結後に、建築の構造的安全性が欠落している重大な「カシ」が発見されると、その物件の価値はその瞬間にゼロに落ちるのみか、建替えとか補修とかの費用によりマイナスの価値に転落する可能性が高くなる。
 しかもこの場合、買主の側には、通常、構造的安全性に関するカシに関する責任は全くないことが多い。
 このように考えると、構造的カシは、通常の「隠れたカシ」とは本質的に違うものとして扱う必要があるにも拘らず、従来、殆どそれを問題にしてこなかった。
 そのことが、今回、初めて明らかになってきたといえる。




 
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