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(3)平成不況とゼロ金利時代の終焉

●平成不況の変極点はどこか?
 元号が昭和から平成に変わったのは1989(昭和64)年1月7日であり、この年の12月13日に日経平均株価が、史上最高の38,062円をつけたことは前に書いた。
 今から考えてみると、このときが日本経済の「有頂天」のときである。つまり「平成」はまさにバブル崩壊と共に始まり、以後、20年にわたる不況の時を刻んできた。
 その意味で、この不況は「平成不況」ともいうべきものであり、その長さと深刻さにおいて、大正から昭和にかけての大恐慌に匹敵するものである

 いまようやく不良債権処理にも見通しが立ちはじめているものの、世界に類例のない超高齢化の進行と、膨大な国債残高を抱えた深刻な財政危機を考えると、日本経済の低迷からの脱出は容易なことではない。
 この平成不況のなかを、日本の特に金融機関を中心にした企業救済のために考え出された緊急避難の措置が、「ゼロ金利」であった。その平成不況からも少し脱却の兆しが現れ始めており、日銀もゼロ金利時代からの脱却を模索し始めているものの、アメリカを中心とした国際経済の見通しは、楽観できる状況ではない。

 そこでまず、いままであげてきた経済諸指標のなかで、どの時点から不況脱却の変極点が現れ始めたかを図表-8にまとめてみよう。

図表-8 平成不況から脱却の変極点
経済指標 変極点
GDP
2003年
東証株価
2004年
6大都市地価
2005年
企業価格
2003-04年
消費者物価
2006年
完全失業率
2003年

 図表-8はそれぞれの統計数値から導かれたものであるが、このように纏めて見ると尤もらしくみえてくるところが面白い。

 まず2003年に最初に変極点を迎えた指標は、GDP、企業価格、完全失業率である。これは企業活動が活発化する場合に、最初に変化する指標である。
 つまり平成不況の変極点は、2003年に企業の生産面にまず変化が現れてきた
 次に、2004年になり、企業価格と株価の上昇が現れてきた。さらに企業活動の変化は2005年に不動産投資の面に現れ、2006年になり消費者物価の上昇になって現れた。

 日銀が平成不況からの脱出を目指して、インフレ導入を政策に入れようとしたのは、1998年6月29日の日銀金融政策委員会における「インフレ・ターゲット」の提案に遡ると思われる。しかしそれが日銀による戦後初めてのインフレ政策として取り入れられたのは、2001年3月の金融緩和策に始まる。

 日銀が金融措置だけでインフレ政策を始めても、デフレからインフレに誘導する事は出来ない。しかし政府、日銀によるインフレ導入政策は、それから2年遅れて2003年ごろから、企業の生産面に徐々に現れ始めたようである。
 日銀はこの動きにあわせて、ゼロ金利からの脱却を目指し始めた。

 そして消費者物価の上昇が始まった2006年7月、日銀は短期金利の誘導目標をゼロから0.25%に引き上げた。これにより狭義のゼロ金利政策は終わったといえる。だが0.25%という金利はほとんどゼロに等しい状態であり、2007年以降、徐々に引き上げていくことが予定されていた。
 しかし2007年7月に予定されていた第2次の金利引き上げは、サブプライム・ローン問題の登場により延期され、先の見通しが立たない状況に追い込まれている。

●ゼロ金利の終焉と大インフレ到来の危機性
 日本経済におけるゼロ金利時代という異常な時代は、10年もの長い間続いたため、日本経済の体質化してきている。
 そのため大企業も中小企業も、今後の高金利の下で経営が続けることが出来るかどうか、怪しくなってきている。またサラリーマンも、低金利の時代に限度いっぱい借りた住宅ローンの金利が上がり始めたら、もはや自宅を持ち続けることのできない人が続出する恐れがある。

 さらに、日本国自体が1000兆円を越える膨大な債務を抱えており、その金利が上がり始めたら、高金利時代に国も地方も財政の見通しがまったく立たなくなるおそれがある。
 また高齢化社会を迎えて財政支出は増加する一方である上に、関東大震災から84年をへた日本の首都・東京は、2010年代までには巨大地震による災害を経験する確率が非常に高まってきている。

 大正12年9月の関東大震災も、第1次大戦の戦後恐慌のダメージを引きずったままで迎えた。そのため経済危機は昭和恐慌まで持ち越すことになった。
 今回も日本経済はそれと似た、もしくはそれ以上に難しい状況にある。高齢化の進行、労働人口の減少、膨大な国家債務の存在という状況の中で、災害を契機にしてハイパー・インフレが襲ったら、一体どうなるであろうか! 
 2010年代初頭にそのような状態を迎える可能性が高まってきている。






 
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